蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「綾瀬花音さんのことはボロクソだったな。花模様のゴテゴテの着物で、花より自分が目立ちたい時点で失格だって。華道といい日本文化を欠片も理解していないし、あれではこの先はないでしょう、とね。少なくとも茶道界からは今後締め出されることになりますって言ってたよ。家元、なかなか怖いね」
綾瀬花音という名前を聞くと、私は目の前のグラスの残り僅かなカクテルを飲み干した。甘くておいしいけれどアルコール度数が高いらしく、頭がぼうっとしてきた。
「アレンジメントは文句なしに上手ですよ。それになんといっても美人だし華があります」
私が持ち得ないものをたくさん備えた人。素直に褒めたいと思う。
でも彼女のことを口にするたび、彼女が蓮司さんに秘密を打ち明けられていたという事実に何度も殺されているような気分になった。
三カ月も同棲していながら、私はなにも打ち明けてもらえなかった。同棲だけではなく、彼と出会ってから四年もの月日を経ているのに、彼女はわずかな期間で彼の中に入り込んだ。
数時間前に知ったその事実が苦しくて、やるせなくて、胸が痛くて耐えられない。なにも知らずに彼の帰りを待っていた夜、彼は彼女と会っていたのだと──。
メニューを取り、次のドリンクを探す。カクテルの甘さは私の中にある苦しみを消すには足りない。
「飲んだことないんですけど、ブランデーってどうやってオーダーするんですか? 代わりにオーダーしてもらっていいですか?」
「いいけど……」
橘部長は少しためらってから水割りをオーダーしてくれた。
綾瀬花音という名前を聞くと、私は目の前のグラスの残り僅かなカクテルを飲み干した。甘くておいしいけれどアルコール度数が高いらしく、頭がぼうっとしてきた。
「アレンジメントは文句なしに上手ですよ。それになんといっても美人だし華があります」
私が持ち得ないものをたくさん備えた人。素直に褒めたいと思う。
でも彼女のことを口にするたび、彼女が蓮司さんに秘密を打ち明けられていたという事実に何度も殺されているような気分になった。
三カ月も同棲していながら、私はなにも打ち明けてもらえなかった。同棲だけではなく、彼と出会ってから四年もの月日を経ているのに、彼女はわずかな期間で彼の中に入り込んだ。
数時間前に知ったその事実が苦しくて、やるせなくて、胸が痛くて耐えられない。なにも知らずに彼の帰りを待っていた夜、彼は彼女と会っていたのだと──。
メニューを取り、次のドリンクを探す。カクテルの甘さは私の中にある苦しみを消すには足りない。
「飲んだことないんですけど、ブランデーってどうやってオーダーするんですか? 代わりにオーダーしてもらっていいですか?」
「いいけど……」
橘部長は少しためらってから水割りをオーダーしてくれた。