蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
橘部長に身体を支えられながら立ち上がる。店の外に出ると、ずらりと並んだタクシーに乗り込むでもなく、橘部長は少し先のブロックまで私を支えて歩いた。
「どこに?」
「すぐ近くだよ。そこからタクシーに乗ろう」
なぜ今すぐ乗らないのかよくわからなかったけれど、上背のある橘部長が軽々と私を支えて歩くので酔った身体でも心地よく、私はしばし夜の銀座の街並みを楽しんだ。まあ、傍目には酔っ払い女を介抱する気の毒なイケメンという構図なのだろうけど。
「さあ、ここで乗るかな」
左手にガラス張りの煌びやかなダイニングバーがあり、私はなんとなくそちらに視線を向けた。なにか強烈な視線を──以前にも受けたことのある、殺傷能力の高い視線を感じたのだ。
窓越しに見える客のなかに、目をやられるほどひときわ鮮やかな赤の服を着た人がいる。目立つのが好きなのねと考えながらよく見ると、それは昼間に嫌というほど見た真っ赤な振袖だった。
けれど私の視線はその振袖を着た人ではなく、その向かい側に座る背の高い男性に引き寄せられていた。
こちらを睨むその男性の視線が強烈だったから。
そして彼ははっきりと、遠目にわかるぐらい激怒していたから。
それは蓮司さんだった。
「どこに?」
「すぐ近くだよ。そこからタクシーに乗ろう」
なぜ今すぐ乗らないのかよくわからなかったけれど、上背のある橘部長が軽々と私を支えて歩くので酔った身体でも心地よく、私はしばし夜の銀座の街並みを楽しんだ。まあ、傍目には酔っ払い女を介抱する気の毒なイケメンという構図なのだろうけど。
「さあ、ここで乗るかな」
左手にガラス張りの煌びやかなダイニングバーがあり、私はなんとなくそちらに視線を向けた。なにか強烈な視線を──以前にも受けたことのある、殺傷能力の高い視線を感じたのだ。
窓越しに見える客のなかに、目をやられるほどひときわ鮮やかな赤の服を着た人がいる。目立つのが好きなのねと考えながらよく見ると、それは昼間に嫌というほど見た真っ赤な振袖だった。
けれど私の視線はその振袖を着た人ではなく、その向かい側に座る背の高い男性に引き寄せられていた。
こちらを睨むその男性の視線が強烈だったから。
そして彼ははっきりと、遠目にわかるぐらい激怒していたから。
それは蓮司さんだった。