蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
***

 翌朝。あれだけ泥酔したにも拘わらず、私は秒もたがわず正確な時刻に身支度を整えていた。
 寝過ごさなかったのではない。
 一睡もしていないのだ。


 昨夜、橘部長とタクシーの中で別れてひとりで帰宅した私は、お風呂に入ってすっきりしたあと、蓮司さんの帰りを心静かに待った。あなたが好き、というただそのひと言を胸にして。


 でも──蓮司さんは帰って来なかった。


 ルーフテラスの上に広がる空が白み、小鳥たちのさえずりが聞こえ始めた頃、私はひと晩中座り続けていたソファーからようやく立ち上がった。
 一途な思いはそのままの強さで、沸々とたぎるマグマのような怒りに変わっていた。こんな時間になるまで待ち続けた愚かな自分も腹立たしい。



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