蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「どうだった? さっき会議であいつを見たけど、低調そうだった。なにかあったの?」

「お疲れなんでしょうね。朝帰りで。入れ替わりで出てきたので話もしていませんがね」


 私は腕組みをして答えた。


「これは面白いことになってきたな」

「全然面白くないです」


 橘部長はやけに楽しそうだ。蓮司さんとこれまで距離があるように見えたのは、血縁関係にあることを周囲に感づかれないようにするためと、事実上従兄弟である彼らには親近感とライバル意識があるのだろう。


「また飲みに行こう。あいつが許してくれるならね。後日談聞かせてよ」


 橘部長は笑顔を見せたあと、机の下から花束を取り出した。


「これは今まで頑張ってくれた感謝と、これからのエール」

「え……っ、ありがとうございます!」

「花の専門家に花束を贈るなんて、僕は知識がないから自信がないんだけど」

「いいえ、とても綺麗です! 普段は人にあげるばかりだから、なんか新鮮で……すごくうれしいです。こんな気持ちになるんですね」

「念のため、ブーケ・ダンジュじゃないからね」

「その名前、当分聞きたくないです」


 笑いながら席に戻り、それから他部門に挨拶に行った。リネン室の小舟さんからはお餞別に黒飴の大袋を、真帆からはドリンク剤の箱をもらった。ふたりとは今後も立ち食い蕎麦屋で会う約束だ。


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