蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「鷹取部長は?」
昨夜のチャンスを逃したので、退職と同棲解消は会社で告げて片づけてしまおうと思ったのに、蓮司さんは席にいなかった。
「鷹取部長は三時から顧客企業と打ち合わせだから、もう会議室に移動したんじゃない? いつも早めに行っちゃうよ」
時刻は二時四十五分。引越し業者が五時に来ることになっているから、彼が打ち合わせから戻るのを待ってもいられない。告げるだけならすぐ済むので、私は会議室に赴くことにした。
真帆に教えられた会議室に行ってみるとドアが開いたままになっていて、彼はひとりで腕組みをして窓にもたれ、ぼんやりと考え事をしているようだった。
「鷹取部長」
入口から声をかけると、顔を上げて私を見た彼はそれまでの疲れた表情から一変して、見る間にいつもの鋭さが戻った。怯まずに私も視線に力を込める。彼の姿を見るのはもう最後になるのだろう。
昨夜のチャンスを逃したので、退職と同棲解消は会社で告げて片づけてしまおうと思ったのに、蓮司さんは席にいなかった。
「鷹取部長は三時から顧客企業と打ち合わせだから、もう会議室に移動したんじゃない? いつも早めに行っちゃうよ」
時刻は二時四十五分。引越し業者が五時に来ることになっているから、彼が打ち合わせから戻るのを待ってもいられない。告げるだけならすぐ済むので、私は会議室に赴くことにした。
真帆に教えられた会議室に行ってみるとドアが開いたままになっていて、彼はひとりで腕組みをして窓にもたれ、ぼんやりと考え事をしているようだった。
「鷹取部長」
入口から声をかけると、顔を上げて私を見た彼はそれまでの疲れた表情から一変して、見る間にいつもの鋭さが戻った。怯まずに私も視線に力を込める。彼の姿を見るのはもう最後になるのだろう。