蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
 カップ酒を取り返そうと手を伸ばしたら、彼は腕をヒョイと高く上げた。身長差があるので勝負にならない。


「どこに行くつもりだ?」

「どこって、決まってるでしょ」

「あいつのところか?」

「とにかく返して」


 もう一度伸ばした私の手首を彼が掴んだ。その途端、昨夜から抑え込んでいた私の感情が爆発した。


「触らないで! 朝帰りしたくせに」


 掴まれた手首がひりひりする。ほかの女性と過ごして朝帰りした姿を目の当たりにしながら、それでもその手で抱き締めてほしいと願ってしまう自分の恋情が痛くて苦しくてたまらない。


「そっちだってあいつと一緒にいただろ。あいつとどこに行ったんだ?」

「朝帰りしておいて勝手なこと言わないでよ!」


 このまま彼に触れていたら、きっと私は出て行けなくなる。前に進めなくなる。必死でもがき、私は彼の胸を突き飛ばしていた。


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