蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「全然わかってない。あなたを好きになったのは打算じゃない。橘部長に本気で恋したこともない。枕を持って部屋に行くのにどれだけ勇気がいったか、全然わかってくれてない。この歳で初めて人を好きになって、どうしたらいいのかわからなくて、断られて傷ついて、ほかの人と会ってるってわかってるのに馬鹿みたいに朝まで待って」


言い始めると止まらなくなった。
言い終えて拒絶の返事を聞くのが怖かった。
拒絶されて何も言えなくなる前に、全部言ってしまいたかった。


「退職することを言えなかったのはあなたに同棲を解消されるのが怖かったからよ。一日でも長く傍にいたかったからよ。それでもあなたの前から消えようって決めたのも、こんなに格好悪く泣いてるのも、怒ってばっかりいるのも全部全部、あなたが好きだからじゃない! 全然、わかってない」


 涙で塞がってなにも見えないまま喋り続けていたら、不意に腕を引かれ、広い胸に抱き締められた。


「放してよ。ほかの人に触れた手で──」

「好きだ」

「嘘──」


 勢いで言い返そうとした言葉は彼の唇で封じられた。


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