蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
涙で濡れた頬を両手で挟まれ、抵抗できない強さで唇を塞がれる。


「好きだ」


 わずかに唇を離した彼がそうつぶやき、またキスをする。


「好きだ……乃梨子」


 瞼を開くと、彼がとても切なそうな顔で私を見ていた。


「俺のほうがずっと」


 ずっと、なに……?
 尋ねる前にまた唇が重ねられた。今度のキスは深く激しく、すっかり力が抜けた私の身体は彼の力だけで支えられていた。
 彼の腕の中、ようやく放された口ではあはあ息をする。泣いたせいで鼻が詰まり、口でしか呼吸できないのだ。こんなときにも私は本当に格好悪い。
 喘いでいる私を床に座らせ、腕の中に収めながら彼が笑った。


「鼻垂らしてるのも可愛いな」

「なに言っ──」


 そこでまた唇を塞がれた。でもやっぱり彼はどこまでも優しい人なのだと思う。彼は私の息継ぎを待ち、キスをするたび、唇を離すたび、何度も好きだと囁いた。


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