蜜愛婚～極上御曹司とのお見合い事情～
「乃梨子にいろいろ仕掛けてくるのはわかってた。でもあそこまでひどいとは予想していなかった。悪かったよ。ずっと謝りたかったけど、イベントが終わるまでは顧客だし、あんな客に対応するのは我々の当然の仕事だ。それに乃梨子はいずれ白川の経営者としてブーケ・ダンジュと対峙することになる。敵の内情を知るいい機会だと思ったんだ」

「もうちょっと優しくしてほしかったです」

「優しくするのは橘の役割だからな」


　蓮司さんはどうしても橘部長が気に入らないらしく、綾瀬花音の話をするときよりさらに苦々しい顔になった。


「あいつは女好きだからな。悪気はないんだけど」

「もてるからでしょうね。優しいし、私は好きですよ」


　素直に褒めたら蓮司さんにすごい顔で睨まれた。


「お前は鈍感だからわかってない」


　それから彼は意外なことを教えてくれた。


「見合いは最初、橘がお前の相手だったんだ。俺がそれを横取りした」

「どうして……？」

「正確に言えば、橘にするか俺にするかで父親は迷ってたんだ。俺はもともと見合いなんかする気はなかったし、戸籍上は他人だから父親からはなにも受け取らないつもりだった。でも相手が白川乃梨子だと聞いて、俺でなければ橘にすると聞いて、願い出ずにはいられなかった」


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