蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「手を出してくれないから、ずっと悩んでたのに。私って色気がないのかなとか、初めてだから面倒臭いのかなとか、私を好きにさせてこっぴどく振って会社をやめさせる計画なのかなとか」

「最後の妄想、どれだけ俺は性悪なんだ」

「だって面接のときから虐めまくったじゃない! 人を小バエみたいに言って」


 最悪の出会いからこんな未来があるなんて想像もしなかった。あの黒歴史まで愛おしくなる。そして、次に彼が教えてくれたことに胸がいっぱいになった。


「もしかして、あの面接で俺は乃梨子に惚れたのかもしれないな」


 私よりずっと先に彼は私を好きになってくれていた。いいえ、私だってきっとあのとき、あそこまで怒り狂ったのは彼が特別な人だと本能で感じていたからかもしれない。
 でもその盛り上がりにはすぐ冷水が浴びせられた。


「まあ、惚れたかどうかは別にして、あれからお前を虐めるのが快感になったのは事実だ」

「変態」


 笑いながら詰ると、「変態で結構」とキスが返ってきた。


「面接か……懐かしいな」


 彼は見たこともないぐらい優しい顔で目を細めて笑った。


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