蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「面接で、俺は名前を記憶していたからわかってたよ。白詰草の花畑がなくなったと言って泣いていた子だと。お前はすっかり勘違いして橘だと盛り上がってたけどな。だから父親が誰なのかは言わなかった。俺にとっては社長の息子であることは重要ではなかったし、じきにお前は俺との同棲に耐えられなくなって出ていくんだろうと思ってたし、あえて思い出を潰すまいと思ってた。あのときはね」
「あのときは、ってどういうこと?」
「手放せないぐらいに好きになっていった。乃梨子の悪戯も、なにをされても可愛くて仕方がなかった。好きになればなるほど苦しくて、優しくするのが難しくなっていった」
「充分、優しかったですよ。さっきももっと早く消えるはずだったのに、優しかったことを一つひとつ思い出して泣いてました」
カップ酒がそこら中に転がるキッチンの床で、私たちは見つめ合った。私がさっき暴れたせいなのか、隅っこでは踏み台が引っ繰り返っている。最高の夜景はいらない。お洒落なシチュエーションもいらない。ただ彼がいればいい。
「乃梨子」
蓮司さんが両手で私の頬を挟み、真剣な表情で囁いた。
「もう、俺のものにしていいか?」
「……はい」
ふたりの柔らかな息が重なった。
「あのときは、ってどういうこと?」
「手放せないぐらいに好きになっていった。乃梨子の悪戯も、なにをされても可愛くて仕方がなかった。好きになればなるほど苦しくて、優しくするのが難しくなっていった」
「充分、優しかったですよ。さっきももっと早く消えるはずだったのに、優しかったことを一つひとつ思い出して泣いてました」
カップ酒がそこら中に転がるキッチンの床で、私たちは見つめ合った。私がさっき暴れたせいなのか、隅っこでは踏み台が引っ繰り返っている。最高の夜景はいらない。お洒落なシチュエーションもいらない。ただ彼がいればいい。
「乃梨子」
蓮司さんが両手で私の頬を挟み、真剣な表情で囁いた。
「もう、俺のものにしていいか?」
「……はい」
ふたりの柔らかな息が重なった。