蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「誰がなにを言おうが、俺にとってお前の初めては大事なんだよ。心が手に入らなければ諦めるつもりだった。身体だけ奪ったら、お前にとって悲しい記憶になるだろ。二度と取り戻せないんだからな」


 私たちは三カ月も迷走していたけれど、この夜のために彼はずっと我慢してくれた。勢いではなく、成り行きではない夜のために。


「お前の初めては、俺にとってものすごく、貴重なんだよ」


 彼の息も乱れていた。私を虐めながら私のために我慢を重ねる愛おしい人。


「蓮司さん」


 息を乱しながら彼の頬に触れる。


「好き……好き」


 囁くごとに身体に感じる疼きは高まっていく。彼もきっと、同じ。
 彼の顔を引き寄せ、私からキスをした。


「だから、どうすればいいのか教えて」

「乃梨子」


 その囁きを合図に、彼がギアを変えたのがわかった。唇に頬に身体に、彼の熱い息が降り注ぐ。


「俺が全部教えてやる」


 ひとつになる瞬間を迎え、彼を見つめる。ベッドの流儀に無知でも、どんなに痛くても、もうなにも不安はなかった。


「俺がどれだけお前を好きか、教えてやる」



 それから私はとても恥ずかしいことをたくさんされ、とても恥ずかしい声を何度も上げ、あとから思い出したら死にたくなるぐらい恥ずかしいことを何度も口走った。

 痛くて甘くて苦しくて、最高に幸せで、そして次の日起きられなくなるぐらい疲れること。

『女の子はみんなお花なのよ』


 その夜、私は彼の腕の中で初めて蕾を開き、彼のためだけに咲く花になった。



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