蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「芸能界には恐ろしい先輩方が大勢いらっしゃるからな。俺たちが手を汚さなくても、ぺしゃんこに潰してくれるだろう」


 彼女に芸能界転向を勧めた恐ろしい意図が明かされ、呆れて隣を見上げる。


「……蓮司さんって思ったより真っ黒なのね」

「今頃知ったか」


 彼は笑い、私の手を取った。


「さあ、行こう。三時からだろ?」

「橘部長とふたりきりでみっちり打ち合わせするはずだったのに」


 口を尖らせるふりをしながら、しっかり彼の手を握り返す。


「絶対駄目だ」


 笑いながらブライダルサロンに歩き始めた私たちを、白詰草のブーケが微笑んで見送っている。

 花言葉は「約束」。
 私は彼の隣で怒ったり拗ねたりしながら、あの遠い日の約束を、そして祭壇の前の誓いを守っていくだろう。


 十年後も、二十年後も、ずっと。





fin.
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