蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
誰かの人生の大切なセレモニーをお手伝いできるご縁への喜びは、何度繰り返しても変わらない。多い日には各バンケットルームが一日二回転、ホテル全体では十数組の披露宴を行うときもあるけれど、私たちはひとつひとつが最高のものであれと願い、ベストを尽くしている。決して流れ作業ではない。それは花の仕事にも通じるものがあるから余計に感動してしまう。
清掃作業が始まった会場を出ようとしていた私は絨毯の隅に落ちていたスズランの花を拾い、営業企画部まで持ち帰った。
「お疲れさま。ありがとうね」
小さなグラスにスズランを差して労ってやる。
ほんの数センチの長さのスズランは花嫁のブーケから落ちたものだろう。ブーケのままでいれば今頃花嫁の腕に大切に抱かれているはずなのに、折れて落ちればゴミにされてしまうのだから、花の運命は儚いものだ。
頬杖をついて白い可憐な花を眺める。
昔、祖母が言っていた。
『女の子はみんなお花なのよ』
愛されていつか綺麗に咲くのだと。そう、あの頃は自分も恋をして結ばれて、綺麗なお花になるのだと信じていた。
そうしてはや二十七歳。披露宴の華やかさから我が身をふと振り返ると、そのギャップをしみじみと感じる。
「どこで間違えたのかな……」
いまだ恋ひとつできず、その気配もない。挙げ句の果てには苦手な男との縁談がのっぴきならない状況に陥っているのだから。
「ううう」
披露宴の間は意識の外に押しやっていた昨日の悪夢がよみがえり、思わず顔を覆って呻いた。
清掃作業が始まった会場を出ようとしていた私は絨毯の隅に落ちていたスズランの花を拾い、営業企画部まで持ち帰った。
「お疲れさま。ありがとうね」
小さなグラスにスズランを差して労ってやる。
ほんの数センチの長さのスズランは花嫁のブーケから落ちたものだろう。ブーケのままでいれば今頃花嫁の腕に大切に抱かれているはずなのに、折れて落ちればゴミにされてしまうのだから、花の運命は儚いものだ。
頬杖をついて白い可憐な花を眺める。
昔、祖母が言っていた。
『女の子はみんなお花なのよ』
愛されていつか綺麗に咲くのだと。そう、あの頃は自分も恋をして結ばれて、綺麗なお花になるのだと信じていた。
そうしてはや二十七歳。披露宴の華やかさから我が身をふと振り返ると、そのギャップをしみじみと感じる。
「どこで間違えたのかな……」
いまだ恋ひとつできず、その気配もない。挙げ句の果てには苦手な男との縁談がのっぴきならない状況に陥っているのだから。
「ううう」
披露宴の間は意識の外に押しやっていた昨日の悪夢がよみがえり、思わず顔を覆って呻いた。