蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
昨日、鷹取蓮司は予告通り二時間ほどで部屋に戻ってきた。自分で着付け直し彼を待ち受けていた私を見て「もう大丈夫か?」と再度確認すると、彼は私の自宅まで車で送り届けてくれた。
白川家の門まで付き添ってくれた彼を家の窓から見ていたらしい母は、すっかり彼を気に入ってしまったようだ。
『橘さんって、なんて美男子なのかしら』
『橘部長じゃなかったわよ! あれは鷹取蓮司っていう統括部長でね、すごく嫌味な人だし白川を胡(う)散(さん)臭く思ってるのよ。だからきっとこのお見合いは裏になにか──』
『乃梨子。ちょっと待ちなさい』
母がふと真顔になり、私の胸元と帯をじっと凝視する。まずい、と思ったがもう遅かった。
『あなた、一度着物を脱いだわね?』
小さな頃から日常的に着物に親しんできた母の目は、やはりごまかせない。
『いや、お母さんが思ってるような、そういうことじゃなくて! きつく締めすぎて気分が悪くなっちゃって、その……』
両親は「結婚までは男女交際厳禁」という化石のような感覚をいまだに世間の常識だと思い込んでいる。不本意ながら私はそれに従う結果となってしまっているのだけど。
白川家の門まで付き添ってくれた彼を家の窓から見ていたらしい母は、すっかり彼を気に入ってしまったようだ。
『橘さんって、なんて美男子なのかしら』
『橘部長じゃなかったわよ! あれは鷹取蓮司っていう統括部長でね、すごく嫌味な人だし白川を胡(う)散(さん)臭く思ってるのよ。だからきっとこのお見合いは裏になにか──』
『乃梨子。ちょっと待ちなさい』
母がふと真顔になり、私の胸元と帯をじっと凝視する。まずい、と思ったがもう遅かった。
『あなた、一度着物を脱いだわね?』
小さな頃から日常的に着物に親しんできた母の目は、やはりごまかせない。
『いや、お母さんが思ってるような、そういうことじゃなくて! きつく締めすぎて気分が悪くなっちゃって、その……』
両親は「結婚までは男女交際厳禁」という化石のような感覚をいまだに世間の常識だと思い込んでいる。不本意ながら私はそれに従う結果となってしまっているのだけど。