蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「僕はこの豆が一番好きなんだよね」
橘部長は少し色素の淡い目を細めて微笑んだ。髪も目と同じく漆黒ではないダークアッシュで、甘く整った顔立ちと相まってハーフのような透明感がある。仕立てのよさがわかるグレーのスーツに、今日は淡いイエローのネクタイを合わせている。いつ見てもファッション誌から抜け出てきたように完璧だ。
冷静になってみればわかる。こんな神々しいプリンスが、万年干物の私を見初めるはずがないじゃないの。
お見合い話を受けてからずっと舞い上がっていた反動が一気に疲れになって押し寄せる。
小さなカップに口をつけると、濃厚な香りと苦みが鼻腔に広がった。とてもおいしいけれど、今日の私の胃には少々重たかった。
「おいしいです」
それでも気遣いがうれしくて笑顔を向けると、橘部長は満足そうに微笑んだ。私を始め、社内の多くの女性を蕩けさせる笑顔だ。
しかし今の私の脳内にはあの男──鷹取蓮司の毒気のある笑顔が居座っていて、橘部長の笑顔をもってしてもなかなか消えてくれない。
両親はおそらく昨夜のうちに橘社長サイドに受諾の連絡を入れているだろう。
(どうか鷹取蓮司が断ってくれますように)
デミタスカップを包んだ両手に願をかける。
そうよ、昨日は私をいたぶって面白がっていたけれど、まさか私が承諾するとは思っていなかっただろう。どうやって断るか、鷹取蓮司はきっと今頃は慌てているはずだ。
そう考えると仕返しをしたみたいで気分がいい。
橘部長は少し色素の淡い目を細めて微笑んだ。髪も目と同じく漆黒ではないダークアッシュで、甘く整った顔立ちと相まってハーフのような透明感がある。仕立てのよさがわかるグレーのスーツに、今日は淡いイエローのネクタイを合わせている。いつ見てもファッション誌から抜け出てきたように完璧だ。
冷静になってみればわかる。こんな神々しいプリンスが、万年干物の私を見初めるはずがないじゃないの。
お見合い話を受けてからずっと舞い上がっていた反動が一気に疲れになって押し寄せる。
小さなカップに口をつけると、濃厚な香りと苦みが鼻腔に広がった。とてもおいしいけれど、今日の私の胃には少々重たかった。
「おいしいです」
それでも気遣いがうれしくて笑顔を向けると、橘部長は満足そうに微笑んだ。私を始め、社内の多くの女性を蕩けさせる笑顔だ。
しかし今の私の脳内にはあの男──鷹取蓮司の毒気のある笑顔が居座っていて、橘部長の笑顔をもってしてもなかなか消えてくれない。
両親はおそらく昨夜のうちに橘社長サイドに受諾の連絡を入れているだろう。
(どうか鷹取蓮司が断ってくれますように)
デミタスカップを包んだ両手に願をかける。
そうよ、昨日は私をいたぶって面白がっていたけれど、まさか私が承諾するとは思っていなかっただろう。どうやって断るか、鷹取蓮司はきっと今頃は慌てているはずだ。
そう考えると仕返しをしたみたいで気分がいい。