蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「自慢じゃないけど、なに?」

「なんでもないです」


 そこで私は咳払いして、彼に共同戦線を張ることを持ちかけた。


「誤解だってふたりで説明すればいいですよね!」

「その必要はない」

「どうして? ほかになにか方策が?」

「俺はこのままでいい」


 驚愕のあまり、私の顔から作り笑いがはげ落ちた。


「だってこのままでは結婚する羽目になりますよ! 私と!」

「ああ。なにか問題が?」

 彼は平然と問い返した。


「そもそも俺が社長に所望した話だからな。元々社長の頭には橘部長があったかもしれないけどね」

「な、な……」


 彼が私を所望したという衝撃の事実に、まともに言葉が出てこない。かといって目の前の男は甘い告白をしているようにはまったく見えない。それは彼の次の言葉で確信に変わった。


「結婚はビジネスなんだろ?」


 やはり彼はあくまでも私から断らせるつもりなのだ。すぐに辞めると高をくくっていた白川の人間がしぶとく居座っているから、この機に排除してしまおうと。彼が私を所望した理由はそれしかない。

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