蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「周囲の認識は、もうやることは済ませた仲だからな」

「いや、だからそれは」

「同棲は社長も承諾済みだ。善は急げと喜んでおられた」

「…………」


 理屈で確実に追い込んでくる彼に、私はなにも言い返せなかった。そもそも発端は白川家なのだから。


「ベッドの続きが楽しみだな」


 彼は絶句する私を眺めて軽く笑ってから、いきなりこちらに手を伸ばした。背後の壁に退路を阻まれた私はただ目を見開いて彼を待ち受ける。[平林55]顔の横を通り過ぎた彼の指先がかすかに首筋の肌に触れ、身体がひとりでにビクッと反応する。


「ここ、ほつれてるぞ」


 シニョンからひと筋漏れた後れ毛がふわっと掬い上げられた。


「あとで鏡見ろよ」


 そう言い残して去って行く彼の背中を、壁に張りついたまま見送った。


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