蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「ああ……」


 行き止まりの階段に腰を下ろし、両手で顔を覆う。首筋にはまだピリピリとした電流の刺激のように、彼の指の感触が残っている。


〝同棲は社長も承諾済みだ。善は急げと喜んでおられた〟
〝俺が所望した〟
 白川の両親は言わずもがなだ。


「四面楚歌じゃないの……」


 しばらく落ち込んだあと、私はふたつのカップを握り締め、憤然と立ち上がった。


「負けるものですか」


 どちらが断るか、これは根比べだ。
 そうよ、別に難しいことではない。なにしろ二十七年間、誰ひとりとして手を出そうとしなかった干物女だ。私の地肌を思いっきり出して、辟易させればいいのだ。彼が音を上げるまで。


「簡単よ!」



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