蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
その夜、私は真帆のアパートにお邪魔していた。真帆も立ち食い蕎麦仲間だけど、さすがにあんな場所で打ち明けられる話ではない。
「で、で、橘部長とどうなった?」
小さなちゃぶ台を挟んで腰を落ち着けると、こちらに身を乗り出して目を輝かせている真帆に、私は渋々白状した。
「どうもならなかった。ていうか、相手は橘部長じゃなかったの。うちの父の勘違いだった」
「なーんだー残念!」
私が橘部長ファンであることをよく知っている真帆はいったん落胆したけれど、すぐにまた身を乗り出した。
「じゃあ誰? うちの社でしょ?」
「……うん」
「誰、誰? イケメン?」
「イケ……メンなんだろうね」
「なによ、もったいぶらずに早く教えてよ」
「おたくの上司」
「……へ?」
「鷹取蓮司」
真帆の手はカップ酒を持ったまま中途半端な位置で止まっている。私が手土産で持参したものだ。かなり長い間宙に浮いたままのそれを眺めながら、腕がだるくないのかなと考えた。
「で、で、橘部長とどうなった?」
小さなちゃぶ台を挟んで腰を落ち着けると、こちらに身を乗り出して目を輝かせている真帆に、私は渋々白状した。
「どうもならなかった。ていうか、相手は橘部長じゃなかったの。うちの父の勘違いだった」
「なーんだー残念!」
私が橘部長ファンであることをよく知っている真帆はいったん落胆したけれど、すぐにまた身を乗り出した。
「じゃあ誰? うちの社でしょ?」
「……うん」
「誰、誰? イケメン?」
「イケ……メンなんだろうね」
「なによ、もったいぶらずに早く教えてよ」
「おたくの上司」
「……へ?」
「鷹取蓮司」
真帆の手はカップ酒を持ったまま中途半端な位置で止まっている。私が手土産で持参したものだ。かなり長い間宙に浮いたままのそれを眺めながら、腕がだるくないのかなと考えた。