蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
意外だったのは本格的な和室があることだった。リビングに通される途中でちらりと見えたそれはきちんとした床の間もある、趣のあるしつらいだった。住居のほかの部分と調和するようにうまく空間デザインされているけれど、エントランスといい、彼ではない誰かの趣向が残されているような気がした。
ご家族? 恋人?
釣書を交わしていないので、彼のプライベートはなにもわからない。真帆から「たぶん三十三歳」と聞いたことがあるだけだ。いや、どうせすぐに同棲は解消する計画だし、別に知りたいわけではないのだけど。
「家の中はあとで案内するけど、とりあえずなにか要望は?」
リビングに所在なく突っ立ったまま考えていると、テーブルの上を片づけながら彼が尋ねた。私が来るまで仕事をしていたらしく、パソコンやファイルが積んである。
「あの、住居のことではないんですけど……」
彼は答えず黙って目で先を促した。省エネ主義なのか、いつもながら彼は必要最低限の反応しか見せないので、余計に緊張する。
ご家族? 恋人?
釣書を交わしていないので、彼のプライベートはなにもわからない。真帆から「たぶん三十三歳」と聞いたことがあるだけだ。いや、どうせすぐに同棲は解消する計画だし、別に知りたいわけではないのだけど。
「家の中はあとで案内するけど、とりあえずなにか要望は?」
リビングに所在なく突っ立ったまま考えていると、テーブルの上を片づけながら彼が尋ねた。私が来るまで仕事をしていたらしく、パソコンやファイルが積んである。
「あの、住居のことではないんですけど……」
彼は答えず黙って目で先を促した。省エネ主義なのか、いつもながら彼は必要最低限の反応しか見せないので、余計に緊張する。