蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「俺は気にしないが?」

「寝相も悪いです」

「キングサイズのベッドだからそれは気を遣わなくていい」

「いえ、私の寝相は想像を絶するレベルなので」


 なにがなんでもここで負けるわけにはいかない。この間の例があるし、情けないことに彼が信用できないというより自分が信用できないのだ。うっかりその気になると、また赤恥をかかされるのがオチだろう。


「歯ぎしりします。寝言も言います。それから……」


 私が必死で並べ立てていると、彼が声を上げて笑い出した。


「わかったわかった。おねしょもするんだろ? 部屋に案内する。来いよ」


 一瞬返事をするのも忘れて固まったあと、リビングから出て行く彼を慌てて追いかける。


「お、おねしょはしません!」


 なによ、今の笑顔……。
 初めて見る彼の屈託のない笑顔に、私は思いがけず動揺していた。




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