蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
もう一度時刻表示を見る。十時五分。やたらに時計を見てしまうのは、彼を待ちわびているからではない。そろそろマシな恰好に着替えておこうかと迷い始めているからだ。
私が今着ているのは高校時代から愛用してきたジャージで、さらに髪はすべててっぺんでまとめたパイナップルヘアーだ。昼間は仕事できつくシニョンに纏めているので、頭皮の血行のためにはこうするのがいいと勝手に信じている。
お洒落な女子ならサロンでヘッドマッサージでも受けるものだろうけれど、私はサロンやエステの雰囲気が少し苦手だ。そこに出入りする客層のこれみよがしなセレブ臭でお腹いっぱいになってしまう。リラックスしたいなら日帰り温泉に行くほうが好きだし、社交界関係の見栄だらけの女子会の豪華ランチより、真帆や小舟さんと立ち食い蕎麦屋で蕎麦をすするほうがずっと楽しい。
幻滅されたいと言いつつ、私はそういう自分をまだ彼に見せていない。このジャージ姿もそうだ。そればかりか同棲を開始した翌日には仕事帰りに足を棒にしてショップを巡り、可愛い部屋着をわざわざ買ってしまった。その理由を私は見つけることができずにいる。
「まあ、白川家の沽券に関わるしね」
没落しているとはいえ、一応由緒ある家柄なのだから。それにあのお洒落な部屋着は意外と着心地がいいし、着るとちょっと綺麗な女の子になれたようで、くすぐったい感じもまあ悪くはない。
私が今着ているのは高校時代から愛用してきたジャージで、さらに髪はすべててっぺんでまとめたパイナップルヘアーだ。昼間は仕事できつくシニョンに纏めているので、頭皮の血行のためにはこうするのがいいと勝手に信じている。
お洒落な女子ならサロンでヘッドマッサージでも受けるものだろうけれど、私はサロンやエステの雰囲気が少し苦手だ。そこに出入りする客層のこれみよがしなセレブ臭でお腹いっぱいになってしまう。リラックスしたいなら日帰り温泉に行くほうが好きだし、社交界関係の見栄だらけの女子会の豪華ランチより、真帆や小舟さんと立ち食い蕎麦屋で蕎麦をすするほうがずっと楽しい。
幻滅されたいと言いつつ、私はそういう自分をまだ彼に見せていない。このジャージ姿もそうだ。そればかりか同棲を開始した翌日には仕事帰りに足を棒にしてショップを巡り、可愛い部屋着をわざわざ買ってしまった。その理由を私は見つけることができずにいる。
「まあ、白川家の沽券に関わるしね」
没落しているとはいえ、一応由緒ある家柄なのだから。それにあのお洒落な部屋着は意外と着心地がいいし、着るとちょっと綺麗な女の子になれたようで、くすぐったい感じもまあ悪くはない。