蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
通った鼻筋に怜悧な切れ長の目。引き締まった長身の体躯。額にさらりと落ちる黒髪。
そこに立っていたのは嫌味なほど完璧なスペックを持つ男、ホテル事業統括部部長の鷹取蓮司だった。彼は橘部長のような血統書つきのサラブレッドではないものの、女子社員の人気を橘部長と二分している。
しかし私は、顔を見るだけで胃がおかしくなるぐらい彼が苦手だ。原因は出会いにさかのぼるのだけど、とにかく嫌味ったらしくて尊大なのだ。腹立たしいことに、それはなぜか私ピンポイントで発揮される。
「お疲れさまです」
きっと仕事かなにかで偶然通りかかったのだろうと思い、早く立ち去ってくれることを願いつつ澄まして会釈した。
「ああ、お疲れ」
ところが鷹取蓮司は、立ち去るどころか断りもなく私の正面の席に悠々と腰を下ろし、長い脚をゆったりと組んだ。彼の行動に面食らう。
「申し訳ありませんが、その席にもうすぐ人が来るんです」
約束の時間まであと五分しかない。一刻も早く追い払わなければ、人生と家運をかけたお見合いが台なしになってしまう。
「えらくめかしこんだな」
私の言葉が聞こえているのかいないのか、彼はメニューを開きながら意地の悪い顔でニヤリと笑った。露骨に馬鹿にされ、私の鼻の穴が膨らむ。
こんな場所で着物を着て〝めかしこんで〟いたのでは、お見合いだということは言わずともばれているだろう。面白がっているに違いない。
そこに立っていたのは嫌味なほど完璧なスペックを持つ男、ホテル事業統括部部長の鷹取蓮司だった。彼は橘部長のような血統書つきのサラブレッドではないものの、女子社員の人気を橘部長と二分している。
しかし私は、顔を見るだけで胃がおかしくなるぐらい彼が苦手だ。原因は出会いにさかのぼるのだけど、とにかく嫌味ったらしくて尊大なのだ。腹立たしいことに、それはなぜか私ピンポイントで発揮される。
「お疲れさまです」
きっと仕事かなにかで偶然通りかかったのだろうと思い、早く立ち去ってくれることを願いつつ澄まして会釈した。
「ああ、お疲れ」
ところが鷹取蓮司は、立ち去るどころか断りもなく私の正面の席に悠々と腰を下ろし、長い脚をゆったりと組んだ。彼の行動に面食らう。
「申し訳ありませんが、その席にもうすぐ人が来るんです」
約束の時間まであと五分しかない。一刻も早く追い払わなければ、人生と家運をかけたお見合いが台なしになってしまう。
「えらくめかしこんだな」
私の言葉が聞こえているのかいないのか、彼はメニューを開きながら意地の悪い顔でニヤリと笑った。露骨に馬鹿にされ、私の鼻の穴が膨らむ。
こんな場所で着物を着て〝めかしこんで〟いたのでは、お見合いだということは言わずともばれているだろう。面白がっているに違いない。