蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「は、はい! いえ、ちょっと待って!」
自分がジャージ姿で、しかもパイナップルヘアーだったことを思い出し、私はドアを開けられないよう押さえに走った。
「あの、リビングまで参りますので少々お待ちくださいませ」
接客時の癖が出て、不自然に丁寧な言葉遣いになる。いきなり「乃梨子」なんて呼ぶからだ。
ドアの向こう側で吹き出す声が聞こえ、足音が遠のいていくと、私は用心深くドアから手を離した。いっそドアを開け放ちこの姿を見せてしまえば簡単に幻滅してもらえるのに、それができない中途半端な女の見栄が情けない。
ともあれ急いで一張羅の部屋着に着替え、パイナップル頭を低い位置のアップヘアに直すと、私はなに食わぬ顔でリビングに向かった。
「おかえりなさい」
蓮司さんはまだ上着も脱いでおらず、帰宅したばかりのようだった。
「帰ったの、気づかなくてごめんなさい」
「いや、全然」
彼は気にする様子もなく上着を脱いでいる。婚約者ならばここで駆け寄って上着を受け取り、ハンガーに掛けたりしてかいがいしく世話をするものだろう。でも私は嫌われるためにここにいるので、仏頂面でいるのよと自分に命令しながら突っ立っていた。それがなんとも居心地が悪い。嫌われるって、わざとやろうとすると実はかなり辛いものだ。
でも彼は元々私に家事をさせるつもりはなかったらしく、食事の用意や掃除なども必要があればふたりが平等にやればいいと言ってくれていた。これが愛情で結ばれた関係なら、最高に理解ある相手だろう。
自分がジャージ姿で、しかもパイナップルヘアーだったことを思い出し、私はドアを開けられないよう押さえに走った。
「あの、リビングまで参りますので少々お待ちくださいませ」
接客時の癖が出て、不自然に丁寧な言葉遣いになる。いきなり「乃梨子」なんて呼ぶからだ。
ドアの向こう側で吹き出す声が聞こえ、足音が遠のいていくと、私は用心深くドアから手を離した。いっそドアを開け放ちこの姿を見せてしまえば簡単に幻滅してもらえるのに、それができない中途半端な女の見栄が情けない。
ともあれ急いで一張羅の部屋着に着替え、パイナップル頭を低い位置のアップヘアに直すと、私はなに食わぬ顔でリビングに向かった。
「おかえりなさい」
蓮司さんはまだ上着も脱いでおらず、帰宅したばかりのようだった。
「帰ったの、気づかなくてごめんなさい」
「いや、全然」
彼は気にする様子もなく上着を脱いでいる。婚約者ならばここで駆け寄って上着を受け取り、ハンガーに掛けたりしてかいがいしく世話をするものだろう。でも私は嫌われるためにここにいるので、仏頂面でいるのよと自分に命令しながら突っ立っていた。それがなんとも居心地が悪い。嫌われるって、わざとやろうとすると実はかなり辛いものだ。
でも彼は元々私に家事をさせるつもりはなかったらしく、食事の用意や掃除なども必要があればふたりが平等にやればいいと言ってくれていた。これが愛情で結ばれた関係なら、最高に理解ある相手だろう。