蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「なにか用事が?」


 蓮司さんがなにも言わないので私から尋ねると、彼はネクタイを緩めながらテーブルを指さした。テーブルの上には筒状の大きな包みと小ぶりの紙袋が置いてある。


「今日のロビーのアレンジで花材が余ったそうだ」


 ホテルのフロントロビーや各所には季節に合わせた大きなフラワーアレンジメントを配置していて、適宜メンテナンスと総入れ替えを行っている。そこで出た端材らしい。
 中身を覗いた私は、思わず喜んで声を上げてしまった。


「わぁ、桜! ありがとうございます!」

「よかった」


 彼は短く答え、唇の端を上げた。


「紙袋はチョコレートだ。取引先からもらった」

「チョコレート、大好きなんです」


 不覚にもまた喜んでしまう。でも好きなものは好きなのだ。


「だろうな。社食のデザートを頼む声がデカくて嫌でもわかる」


 どうして私が珍しく素直に会話しているのに、優しい受け答えをしてくれないのだろか。なにか言い返そうと思ったけれど、長い時間包まれていたであろう花材のほうも気になった。


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