蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「これ、すぐに生けきていいですか? お花も疲れているだろうし」

「いいけど、ここで生けて」

「ここで?」

「ああ。見たい」


 目を丸くして彼を見上げていた私の顔が赤くなった。まさか興味を持ってもらえるとは思っていなかったのだ。しかもそんなストレートな言い方で。


「蓮司さんは先にチョコを食べててくださいね」


 自分の部屋から道具一式を取ってくると私はエプロンを着け、居住まいを正した。花材の水切りを終え、愛用の花鋏を片手に桜の枝ぶりを丹念に眺める。就職してからはあまり時間の余裕がなく、枝ものを生けるのは久しぶりだ。

 長い時間をかけて生長した桜の枝は、花材となれば土と太陽に二度と会えない。水盤の中で生き、命を終える。花を手にするときはいつもその重さを想う。

 彼はワインとグラスふたつを用意していたけれど、まだ開けずに黙って私を見守っている。


「先に飲んでいてください」


 彼にそう告げて、そこからは集中して花材を眺めた。


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