蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「生け花の過程は初めてじっくり見たけど、面白いな」

「そうですか?」

「そこを切るのかってギョッとするんだけど、仕上がりを見て納得する。最終的な姿を見極めて、自然の縮図を再構築してるんだな」

「そうです。だから生ける人によって変わるんです。生け花には絶対的な解がありません。同じ枝はふたつとないですしね」


 つい熱く語りそうになり、そこで止める。もう夜も遅いし、彼は疲れているだろう。
 花首から落ちてしまった桜の花は、水を張ったガラスコップに浮かべた。


「家の中にこういうの置いていいですか?」

「ああ。和室の床の間でもリビングでも、どこでも自由に飾っていいよ」


 落とした枝や使わなかった花を水揚げボウルに入れている様子を彼は物珍しそうに眺めている。


「それはどうするの?」

「また明日生けます。生け花の形にはなりませんが、投げ入れでお茶花みたいにできるので」


 説明しながらゴミをまとめ、手を洗ってこようと立ち上がりかけたとき、蓮司さんがいきなり私の腕を引いた。


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