蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
第二章
嫌われ作戦と彼のお仕置き
静かなダイニングルームに、ふたりが立てる箸遣いのわずかな音だけが響いている。
「…………」
「……なに?」
「なんでもないです」
正面の彼の様子をこっそり窺っているといきなり顔を上げられ、慌てて下を向く。
「お、お口に合いますか?」
「ああ。おいしいよ」
特大の焼き茄子を平らげた蓮司さんはさらっと答えた。
……おかしい。真帆からの情報だと、蓮司さんは茄子が苦手だというのに。
社員食堂で麻婆茄子が出るときは必ず外で昼食を済ませるのだと。
意中の男の心を掴みたいなら、まず胃袋を掴めと巷では言われている。
そこで私は考えた。
嫌われたいのなら彼の胃袋に嫌われればいいのだと。
同棲を開始して一週間が過ぎ、何度か彼と一戦交えようとしたけれど、口ではどうしても勝てない。そこで私は実力行使に出たのだった。