蜜愛婚～極上御曹司とのお見合い事情～

「ひとり暮らしはしないの？」

「そうですね、憧れます。自分のキッチンを持ちたいな、とか」

「白川さんは料理が上手そうだね」

「いえ、そんなことは……でもお料理するのは大好きです」


　橘部長を見上げ、頬を染めて微笑む。
　女は相手によって変われるものだなと、鷹取蓮司と同棲を始めてからつくづく思う。あの男と会話するときは地肌丸出しだけど、相手が橘部長だと自分でも気色悪いほど別人だ。


「僕はひとり暮らしだから、食事が不摂生になっちゃうんだよね」


　作りに行きます！と思わず食いつきそうになった私の横顔に、ふと冷ややかな視線を感じた気がした。

女子社員の羨望の視線ではない、なにかもっと殺傷能力の高い視線を。