蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「え、選べるわよ」


 私は意地を張って言い返した。きっと彼は本気じゃない。今こそ根競べの勝負のときなのだ。


「ぬ、ぬぬ脱がせて」


 余裕を見せたい肝心なときに限って舌がもつれる。それでも私は、組み敷かれながら挑みかけるように彼を見返した。

 なんてったって二十七年間、誰も手を出さなかった干物だ。
 食べられるなら食べてみなさいよ。

 このとき、私は彼がギブアップすると思っていた。
 ところが彼は私の手首を放し、薄い部屋着の胸元の第一ボタンに手をかけた。プツン、と胸元でボタンが外れる音がした。


 うそでしょ──。

 心の中で絶叫する。私の目を見つめたまま、彼はふたつ目のボタンをゆっくりと外した。
 私の肌には触れていないし、なんの力も加えられていない。なのに私は抗うことができなかった。彼が放つ媚薬のようななにかに完全に捕らえられていた。彼の力強さの前に屈してしまいたいと──この瞬間、事実上私は彼を受け入れていた。


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