蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
 ところが三つ目のボタンが外されたとき、私は心の中に突然沸いた超現実的な、そして切実な理由で思わずストップをかけた。


「ま、待って! 私、経験ないの! 一度もお付き合いしたことがないの!」


 初めてだから大切にしてくれとかいう可愛らしいものではない。私の口から勝手に飛び出してきたのは、なんとも無様な脅しだった。


「うう嘘じゃなくて! 食べたらまずいから! 茄子よりまずいから!」


 ああどうしてこんなことを。
 言った瞬間にかき消えたくなった。とても彼の顔を見ることができず、ぎゅっと目を瞑る。


「…………そうなのか?」


 黙って首を縦に振る。
 〝食べたらまずい〟部分を問われているのか〝経験がない〟部分を問われているのか不明だけど、とにかく首を縦に振る。
 最悪だ。なにが最悪なのか脳が考えることを拒否しているけれど、とにかく最悪だ。


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