蜜愛婚～極上御曹司とのお見合い事情～
　真帆に手を振って別れると、今夜は蓮司さんが接待で遅くなるとわかっていたので、少し寄り道をして夏物の部屋着を見て歩いた。

　そこでふと気づく。

私は夏まで同棲するつもりなのだろうか、と。
でもなぜ彼が私を拘束したのか、この同棲がどこに向かおうとしているのか、今もってわからないのだ。

　帰宅してみると、蓮司さんはすでに帰っていた。


「あ、おかえりなさい」


　自分のほうが遅かったのに、習慣でついそんな挨拶が出る。


「俺も今帰ったばかりだ」


　蓮司さんまだスーツ姿で、キッチンで水を飲んでいる。大量の溜息を飲み込んだようなこういう表情を浮かべているときは、嫌な接待があったんだなと最近わかるようになった。


「夕飯は？」

「軽く食べてきた」

「私はちょっと足りないから少しだけ作りますけど、食べますか？　おつまみ程度ですけど」

「ああ、ありがとう」


　あれから数日。私たちは一時休戦状態だ。
　最大の弱味を見せてしまい、恥じ入るあまりしばらく彼の顔をまともに見ることができなかった。けれど蓮司さんはそれまでの態度とまったく変わりがないので、自然と元に戻っていった。


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