蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「前に言ってただろ。橘部長と小さい頃の思い出があると」
「……はい」
蓮司さんの話題はあちらこちらに飛ぶ。
「どんな思い出?」
「ええと……。橘部長はとっくに忘れてると思いますけど……笑わないでくださいよ」
「ああ」
彼の返事と今の雰囲気を信用して、私はためらいがちに話し始めた。誰かに語るのは初めてなので恥ずかしい。
「私が小学生になったばかりの頃だったと思います。その頃、母の実家の周辺にはまだ緑がいっぱいあって、春になると近くの大きな空き地一面に白詰草が咲いていました。私はそこが大好きで、母の実家に預けられると、よくこっそり抜け出して遊んでいたんです。白詰草の花畑の中に座っていると、お姫さまになったみたいな気分になれたんですよね、あの頃」
私が少し照れ笑いして話すのを、彼はワインを飲みながら穏やかに聞いている。
「でもその春行ってみると、空き地は高いフェンスで囲まれていて──」
「……はい」
蓮司さんの話題はあちらこちらに飛ぶ。
「どんな思い出?」
「ええと……。橘部長はとっくに忘れてると思いますけど……笑わないでくださいよ」
「ああ」
彼の返事と今の雰囲気を信用して、私はためらいがちに話し始めた。誰かに語るのは初めてなので恥ずかしい。
「私が小学生になったばかりの頃だったと思います。その頃、母の実家の周辺にはまだ緑がいっぱいあって、春になると近くの大きな空き地一面に白詰草が咲いていました。私はそこが大好きで、母の実家に預けられると、よくこっそり抜け出して遊んでいたんです。白詰草の花畑の中に座っていると、お姫さまになったみたいな気分になれたんですよね、あの頃」
私が少し照れ笑いして話すのを、彼はワインを飲みながら穏やかに聞いている。
「でもその春行ってみると、空き地は高いフェンスで囲まれていて──」