極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
「なんで、って……。その格好で抱き着かれたら、さすがに抑えがきかなくなるだろうが」
「え? ……あ」

 指摘されて自分の身体に視線を落とす。

 すっかり忘れていた。お風呂上がりで、しかものぼせ気味だったせいもあって、かなり薄着。ショートパンツにタンクトップ一枚だ。

 理由がわかって、拒否されたわけではなかったとほっとしたのも束の間、はたとする。
 織をそろりと見上げた。

「もしかして、織……ずっと我慢してた……?」
「そりゃあ!」

 織は今日まで私と同じベッドを使っていたのに、平然と寝ていた。淡白なタイプなんだ、幼馴染みの延長で意識せずにいるんだ、って勝手に解釈していた。

 なのに、ひどく狼狽えた挙句、熱っぽい目を見せられたら……。

 織は頭を掻きながら、ぼそっと続ける。

「好きな子が毎晩隣にいて、平気でいられる男なんていない。そうかといって、麻結の心の準備が整ってないのに押し倒すの嫌だったし」

 織の言い分に驚いて、つい本音を零してしまう。

「再会してから、強引に押してきたくせに」

 触れてきたり、飲み会に私を呼ぶよう謀ったり、私のアパートに転がり込んできたり。織が戻ってきてから、振り回されっぱなし。

「麻結が本気で嫌がることはしなかったと思うけど」

 そう。確かに、織はある一線はきちんと守って、キスも私のタイミングに合わせてくれた。とはいえ、終始、織に主導権を握られている気がして、ちょっと悔しい。

 私は眉根を軽く寄せ、織を睨む。勇気を出して、息を吸い込んだ。

「もう準備……できたよ?」

 照れずに、クールに、なんでもないって顔でさらっと。

 織の動揺を誘うべく、似合いもしないセリフを口にする。

 異常なほど大きな自分の心音に、今にも負けそう。本当は必死なんだって、気づかれてるかもしれない。

 すると、織らしからぬ裏返った声が返ってきた。
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