極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
「はっ?」

 織は目を大きく見開いて、私を穴が開くほど見つめたのち、静かに言った。

「それ、本気で言ってるのか……?」

 織の驚く顔が見たかったのは事実。でも、嘘じゃない。

 私はもうすっかり冷静ぶるのも忘れ、頬を赤くして俯いた。

「私だって、毎晩なかなか……眠れなかったんだから」

 狭いベッドの中で、どうしても身体が触れる。

 すると、過剰に意識して心音が大きく鳴って全神経が織のほうに集中して。
 無心になろうとすればするほど、織の肌や体温、息遣いに反応してしまう自分が恥ずかしかった。

 いっそ、自ら誘ってみようかって何度も頭を掠めた。

 私ばかり、よこしまな気持ちを抱いていたけど、織はなにも変わらず、私の横で寝息を立てていた。

 私は認めたくなくて考えないようにしていただけで、本当は、毎夜手を伸ばす勇気も出ず、織にまったく意識してもらえていない事実にもどかしい思いをしていたんだ。

「――そう」

 精悍な顔つきの織に、目を奪われる。

 彼はさっきまで動揺していた様子を微塵も残さず、まるで別人。

 真顔で私の腕を掴み、リビングを歩く。私は織に引っ張られて、ベッドの上に押し倒された。

「きゃっ」

 反射で閉じた瞼を戻したときには、すでに織は目前にいて、獣のような鋭利な視線を向けている。

「何度も麻結を抱くことを想像していたんだ。性急になるなって言うほうが無理。今夜は覚悟して」

 瞬きもできずに硬直していると、織のかたちのいい唇がやおら弧を描いていくのを見た。

「残念だけど、麻結は今日も寝られないね」

 薄く開いた口から、艶のある低音が零れ落ちる。
 その音が、私の身体の芯を甘く震わせた。

「でももう、心の準備はできてるんだもんな?」

 織は鼻頭を近づけ、やたらと柔らかな声音でささやく。

 心臓の音がうるさい。織に届いていそうなほどだ。
 こんなに緊張する場面なんて、仕事でもないかもしれない。

 だけど、嫌じゃない。怖くはない。

「……うん」

 僅かにうなずき、掠れ声で答えた。

 その先は、ひとつひとつの言動を覚えていられないくらい必死で、ただ私は織にすべてを委ねて彼の熱を感じていた。
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