極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
「これ、この間からずっとあるけど、なに入ってるの?」

 お風呂上がりの織が、部屋の隅に置いていたダンボールを見て言った。

「あー、少し前に実家から送られてきたの。そのまま放置しちゃってた。アルバムだって」
「ふーん」

 織はすでに封の開いたダンボールから、おもむろにアルバムを一冊取り出して、パラパラと捲る。

「あっ。ちょっと勝手に見ないでよ」
「別に今さら見られて困ることないだろ」

 手を伸ばすも、あっけなく交わされ、私の腕は空を切った。

 そりゃ、高校までずっと一緒だったわけで、今さら織に知られてまずいことなんてないとは思う。
 でも、アルバムってなんだか恥ずかしくて。

 ひとりベッドの脇に座ったまま、そわそわと織を見つめる。

「ん?」

 不思議そうな織の声に反応して、咄嗟に立ち上がった。アルバムの中を覗き込もうとした矢先、紙が数枚ひらひらと足元に舞い落ちる。

「な、なんだろ、これ……あっ」

 拾い上げる途中で、その正体がわかった私は慌てて織を仰ぎ見た。すると、にっと口の端を上げた織が、一枚の紙を私に見せつける。

「懐かしいな。『有名なファッションデザイナーのおよめさん』だって。改めて見てもすごい発想だよなあ」
「ちょっ……返して!」

 さっきとは比じゃないくらい、必死になってその紙を取り上げる。

「すごいな。取っといてたんだ」
「お、お母さんが勝手に!」

 けらけらと笑う織を睨みつけ、口を尖らせて反論した。

 私の手の中には、私が小学生のときに書いた、ラクガキみたいな洋服の絵。

 左端に女の子……自分がいて、右側のスペースには所狭しといろいろな色やかたちの洋服を描いている。

 そして、用紙の枠に添って、『有名なファッションデザイナーのおよめさんになりたい』という願望が、一字一字丁寧に書き綴られていた。

『お母さんが勝手に』と言ったけれど、本当は覚えている。

 当時、ひそかに思いをしたためたこの絵を母にも誰にも見られないように、とどこかに隠していたのだ。

 いつしか、この絵の存在も忘れていた。母は、掃除でもしていてたまたまこれを見つけてアルバムに挟んだんだろう。
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