極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
「ほんと……今見るとすごい恥ずかしいな。自分の不器用さに気づいても、どうしてもあきらめきれなかったあの頃の気持ちが表れてるよね。必死過ぎて笑っちゃう」

 過去の自分と向き合っている気がして、堪らずラクガキを胸に押し当てて見ないようにした。

 織は床に散らばったそのほかの絵を、一枚ずつ拾い上げる。

「子どもの夢とはいえ、当時、麻結がすごい落ち込んでたのを俺は知ってる」
「落ち込むなんて。子どもの頃の話だよ?」
「頑張れば頑張るほど、自分の理想と現実とのギャップに焦ってたのも」

 笑ってごまかそうとしても、織は真面目に返してくる。
 それがまた、図星を突かれていて、うまく取り繕えない。しかし、なんとか口角を上げ、明るく振る舞う。

「え、えー……。そうなんだ。なんかもう、織は本当に全部お見通しだったんだね」

 織のお母さんに習っても、一向に上達しなかった。頑張っても、織みたいにうまく縫い物ができなかった。

 自分の思い描く未来が、とてつもなく遠く感じた。

 たかが、十歳過ぎの子どもの夢。
 けれども、確かに今、私の原点にもなっているのは、あの当時の想いだ。燻る感情が蘇る。

「だから、わかってる」

 織が長い睫毛を伏せて、そう口にした。

「も、もう。これ以上、なにがわかってるって言うの」
「その夢は、必死に考えた結果たどりついたものだったんだろ。自分で思う通りの服を作れないのなら、だれかに協力してもらうしかないって」

 織の見解は寸分の狂いもない。我ながら短絡思考だって、失笑してしまう。

「ね。本当に……私って、図々しいっていうかなんていうか」

 自分だけでできないのなら……と、だれかに……織に、頼ってでも夢見ていたかったんだ。
 幼かったとはいえ、浅はかすぎる。

 苦笑した瞬間、額にキスが落ちてきた。吃驚して顔を上げると、今度は優しく抱きしめられた。
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