極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
「そうだけど」

 懸念していた答えを、織は飄々として言った。

「なっ、なんで!」
「だって、麻結のことを考えて作ったものは、ほかの人に着せられない」

 織の真剣な双眸に、言葉も忘れる。

「俺が麻結の夢を表現する。俺の夢は、麻結の笑顔を守ることなんだ」
「どうして……。織は世界に認められるくらい、素晴らしいデザイナーになれるのに。私を中心に考えるなんて、おかしいよ」

 まさか織がこんなにも、昔の私の言葉に影響されているとは思わなかった。

 きっかけになれたことは誇らしくもあるけれど、現状のままじゃハンナさんの言う通り、私が足を引っ張ってるのも同然だ。

 織は一歩下がった私の手を、力強く引いた。

「おかしいだって? 俺は初心を捨ててまで、成し遂げたいことなんかない」

 彼の言葉に心臓が大きく脈打つ。

 織に掴まれている手に持っている、子どものころの夢を今一度見つめた。

「この仕事をしたいって思えたのも、迷わずフランスへ行けたのも、今、服を作るモチベーションを保っているのも、全部俺の中に麻結がいるからだ。もし、そこが揺らいだなら、俺はペンも針を持つことができなくなる。絶対に」

 わかる。私も織と同じ。

 昔の純粋な自分の気持ちを捨てられず、大事にしてきたからこそ、今の自分がある。

 私は抵抗するのをやめ、織の目を覗き込む。

「あのね……。素直に言えば、織の特別なのはうれしい。だけど、私には相応の力がない。どうしても気が引けるの」

 織は世界で必要とされる人。だったら、私は織の才能を広めたい。
 今よりももっと活躍している姿を見たい。
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