極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
「待って! それも私が描いたものじゃない! どうして織まで持ってるのよ!」

 私ばかり辱めを受けて、もう羞恥に耐え切れない。過去の自分の行動に後悔する。

「麻結が俺の部屋に置きっぱなしにしていったから。当時、なにに影響されてたんだか、ボタンを押したら衣装が変わる設定だって。ほら、ここに説明まで書かれてる」

 織が背を向けていた私に、無邪気にその紙を見せようとする。私は堪らず、ぎゅっと目を瞑った。

「もう、本当にやめてよ! 私ばっかり恥ずかし……」
「これはなかなか苦労した。だけど完成した後の麻結の驚く顔を想像したら、断然楽しさのほうが勝ってたね」
「は……?」

 苦労した、って。その口ぶりじゃ、まるですでに作り上げたみたいに……。

 無意識に織の手の中の懐かしい絵を視界に映す。

 かたちや色合い、雰囲気……。最近、どこかで見た気がする。懸命に記憶を辿っていくと、ピンと閃いた。

「これっ。この間、私が着た服?」

 ウエストリボンを解いて変形したあの服だ。
 私が目を剥いて織を見上げると、彼は破顔する。

「大変だったけど、実際にこの前麻結に着せてびっくりしていたのを見て、めちゃくちゃ満たされた。ああ。俺が服を作る意味はやっぱりこれだ……ってね」

 小さい頃の私のデザイン……?

 織の横顔を複雑な心境で見つめる。

「でもこれ……ハンナさんの案だったんじゃ」
「は? どうしてハンナが出てくるの」

 即答されて、私のほうがなぜかたじろいだ。織は真剣な顔つきで、私の言葉を待っている。

「ハンナさんが、一緒に作った……って言って」

 確かに彼女からそう聞いた。

 あのとき、相当ショックを受けたけど、織の反応から察するに、もしかして嘘だったの? 私を織から遠ざけるために……とか?

 混乱していると、織の大きなため息が聞こえてきた。
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