極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
「はあ。一緒にって? 言っておくけど、これまで一着を共同で作ったことはないよ。お互い自分の仕事で手いっぱいだ。手伝う余裕なんかない」

 織は辟易して零すなり、軽く首を横に振る。ぴたりと止まったあと、ぼそっとつぶやいた。

「あの服は、偶然ハンナが俺のアパートに来たときに知られたんだ」

 アパートに……。ハンナさん、織のところに行ったりするんだ。
 まあ、仕事上唯一のパートナーだもん。そういうこともあるんだろう。……って思わないと、どんどん気持ちが落ちていっちゃう。

「麻結?」
「あー、そうだよね。Sakuraは人気のオートクチュールでオーダーもひっきりなしだろうし。想像を絶するほど忙しいんでしょ」

 わざと明るく振る舞って、本心を悟られないようにする。
 しかし、どこか不自然に思われそうで、やたらと饒舌になってしまう。

「そんななか、よくあの服を作ったよね。ほかにも何着かあったみたいだし。ちゃんと休んでるの?」

 織にジッと見られると、すべて見透かされていそうで怖い。内心ハラハラとして笑顔を作る。ふいに織の口元がほころんだ。

「麻結の服を手がけているときだけ、麻結に触れている気がして心が落ち着くんだ。会えない五年、ずっと代わりに服を作ってた」

 これ以上の告白ってない。

 織の言葉の意味を受け止め、たちまち耳まで熱くなる。だけど、どうしても彼女の存在が引っかかった。

「……ハンナさんは、全部見て知ってるの?」
「え? いや、わざわざ見せたりもしないし、たまたま来たとき……」
「そんなにしょっちゅう、アパートに来てたの?」

 言下に声を重ねて尋ねてしまった。

 これじゃあ、私の気持ちがダダ漏れだ。わかっていても、理性を保てず感情に走っちゃう。
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