極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
 その後、午後七時過ぎ頃、店を出た。織には【OK、仕事終わったら連絡取り合おう】とメッセージを入れておいたが、まだ連絡はない。

 ひとまず、こっちの業務は終わったとだけメッセージを追加して入れよう。
 ショッピングモールのソファでスマホを弄っていると、人影に気づいて顔を上げた。

「マユ。間に合ってよかった」
「えっ。ハンナさん! なぜここに?」

 予想外の人物を前に、メッセージ作成の途中で手が止まった。
 ハンナさんは驚愕する私を見下ろし、ニッと笑う。

「SPINのスタッフに聞いたの。ワタシが今日出来る仕事は終わったから。シキに言われて迎えに来たのよ」
「織に……?」

 つい訝しくなって眉根を寄せた。

 織がハンナさん伝いに私を迎えになんて来る……?
 そもそも、ハンナさんだって私をよく思ってないのだから、接触したくもないんじゃないかな。

 どう考えても怪しくて、私は手にしていたスマホに指を落とす。

「あ、今コールはだめ。織は大事な打ち合わせ中で長引いてるの」

 電話で確認するのが早いと思ったのを、ハンナさんに止められた。迷いつつも、彼女の話が本当であれば邪魔になると判断し、スマホを持った手を膝の上に戻した。

「織はなんて言ってたんですか?」

 あまり探りを入れたら失礼かもしれない。だけど、この状況で信用するのは難しい。
 彼女は私に警戒されて憤慨する様子も見せず、淡々と答える。

「マユを連れてホテルで待っててって。あ、ごめんなさい。私もちょっとシキに用があるの。さっきフランスから急ぎの仕事のメールが来てたから」

 ジッとハンナさんを見る。

 嘘かどうか、まったくわからない。まだ腑に落ちない部分はある。

 彼女の説明が本当でもそうでなくても、あとで織と連絡を取ればわかることだ。織からメッセージもないし、ひとまずハンナさんについていってみようか。

「わかりました」

 私はソファから立ち上がり、ハンナさんの一歩後ろをついて、ショッピングモールをあとにした。
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