極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
 言い返したいのを、ギリギリのところで堪えた。

 私たちの関係については口を挟めても、仕事に関しては見守るしかないから。

 すると、織があっさりと返す。

「ご心配なく。今はインプットの期間だと思ってるから」

 そして、私の元にやってきて手を差し出す。私はそろりと指先を乗せ、席を立った。

「行こう、麻結」

 織は私の腰に腕を回してエスコートするように、その場を立ち去ろうとする。一瞬見たハンナさんは、わなわなと唇を震わせていた。

 こんな状態でいいのかな? 確かにハンナさんのやり方や言い方は一方的で強引だ。
 しかし、彼女は紛れもなく織の仕事のパートナー。仲違いをしたままだと、よくない影響が出そうなもの。

「ねえ、織……」
「未来の世界的有名デザイナーの独り占めはどんな気分?」

 私が織を呼び止めるのとほぼ同時に、ハンナさんに嫌味を投げかけられる。足を止めた私は、まっすぐ彼女を見て言った。

「私は……織を束縛しているわけではないです」
「同じことよ。現に今、彼はあなたのせいでレディースラインはまったく手掛けないんだから」

 鼻で笑われ、さすがにカチンときて織の腕から離れてハンナさんの目の前に立った。

「確かに織に制限させてしまっているのかもしれない。だけど私はあくまで織の意思を尊重してる。それなら、私は私のやることをするだけ」

 誰かのためになにかをするのもいいと思う。けど、まずは自分の気持ちに正直に、自分がしたかったことを全うしたい。

「これからも織の創作意欲を掻き立てる存在でいたい。だから、自分の道を信じる」

 もう不必要に周りと自分を比べたりしない。
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