極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
「わかりました」

 刹那、取り囲む人たちがわっと沸いた。

「麻結!」
「無謀だってわかってるよ。でも時間稼ぎくらいにはなるでしょ? その間に織はちゃんとソフィアさんを納得させられるように考えて」

 とりあえずこの場をおさめるのが先決。
 私の実力なんてないに等しいから、結果はボロボロなのは容易に想像できる。

 そうしたら、ここにいるみんなは私にがっかりした眼差しを向けてくるんだろう。でももうなるようになれだ。

「じゃあ、リミットは五日後ね。その間、ソフィー仕事してまたここに来るから。どう? シキ」
「五日間だって……?」

 織が険しい面持ちでつぶやくと、すかさずハンナさんが便乗する。

「あら。問題ないんじゃない? ワタシはフランスに戻るのは少し遅れても、シキがこっちで仕事してくれたら構わないし。マユは素人だし、いくら時間があったってプロと同じレベルのデザイン画は期待できないでしょ」

 こちらにちらっと一瞥をくれるハンナさんは、完全に面白がっている。ぎゅっと下唇を噛んでいると、横から手入れの行き届いた華奢な手が伸びてきた。

「楽しみです。マユ」

 ソフィアさんは白い歯を見せて、屈託なく笑う。
 私は戸惑いながらも、おずおずと握手を交わした。

 ソフィアさんが子気味のいいヒールの音を鳴らし、ロビーからいなくなるなり、近くで見ていたらしい上司が弾んだ声で話しかけてくる。
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