極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
 あれから数か月が経った。

 あの翌日は、M-crash新店オープンイベントを無事に終えた。

 Sakuraとのコラボ商品も初日の在庫もほぼ全サイズ完売。二日目以降も、ネットニュースやSNSなどの口コミでさらに話題になり、さらに売り上げを伸ばしたらしい。

 織はイベントを見守り、夜には大勢のスタッフと初日の成功を祝ったパーティーに参加していた。
 私も仕事の後に同席したが、みんな本当に盛り上がって終始笑顔が絶えない飲み会だった。

 織はその次の日、予定通りの飛行機に乗って行ってしまった。

 私は仕事があって見送りには行けなかった。いや、行かなかった。
 絶対、離れがたくなってしまうってわかっていたためだ。

 五年前の別れとは違う。だから、織との別れは空港ではなく私のアパートで。

 織が回してくれている腕が解けるのがさみしい。
 私を見つめる瞳が揺れているのが苦しい。
 すらりとした指先を名残惜しそうに頬を掠めていくのが切ない。

 長く甘い口づけが終わる瞬間が悲しい――。

 すべての感情がいまなお、鮮明に蘇る。

 だけど私は泣かなかったし、泣かない。
 これは、私たちの未来への一歩だって胸に刻もうって強く決めているから。

 そして、もう秋もすっかり過ぎて冬の寒さに背を丸めて帰宅すると、一通のエアメイルが届いていた。

 私は急く気持ちでアパートの階段を上り、部屋に入るなり開封する。

【麻結。元気?……って、たぶん俺は今日もメッセ―ジ送ってるんだろうけど】

 織のちょっとクセのある字を目で追って、思わずくすっと笑いを零した。

 私たちが別れた日から、織は欠かさずメッセージを送ってくれている。
 今日も例外ではなく、さっきも織から【ランチタイム】っていうメッセージがきていた。

 便箋にはこう続けられている。
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