極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
 確かに、部屋は別とはいえハンナさんが同じホテルに宿泊していると知った手前、織のところなんて行けない。

 彼女は私が織の幼なじみだって知っていたようだったけれど、だからって幼なじみが宿泊先に何度も足を運ぶなんて、変に思われるに決まってる。

「いやいや。あんなに広い部屋に泊まっていて、急にこんな狭いところなんて窮屈でしょ……」

 私は織を横切り、笑って返すとテーブルにグラスを置いた。
 姿勢を戻した瞬間、腕を掴まれる。

「――嫌?」

 織を見れば、整った眉を寄せ、懇願するような眼差しを向けられる。

「い、嫌とかじゃなくて」
「もうホテルはチェックアウトしてきた。これから仕事も佳境に入るだろうし、そうなったら麻結と会う時間も限られる」

 逸らしていた顔を捕らえられる。クイッと上向きにさせられると、織の瞳に吸い込まれる。
 こうなってしまったら、もう逃れるすべはない。

 目を逸らすことも、瞼を閉じることも叶わなくなる。

「せっかく戻ってきたのに、麻結に会えないなんて俺がつらい」
「そんな言い訳、ずる、い……っん」

 瞬く間に、織の柔らかな唇が落ちてくる。

 この感覚を知ったのは、まだ昨日のこと。
 だから、なにかを考える余裕なんて持てなくて、いっぱいいっぱい。

 織は私の性感帯をくすぐるように、ゆっくりと指を絡ませる。
 力が入らない私に代わって、ぎゅっと手を握り、本当に愛しそうに口づけを繰り返す。

 そのせいで、私はもう腰砕け寸前だ。

 膝の力が抜け、なんとか立っている状態。織は私の腰に手を回して身体を支えると、わざと唇を耳介に触れさせ、甘い声で窺う。

「麻結。お願い」
「も、う……! わかったから……!」

 私はすでに限界で、織の腕の中で易々と降参した。
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