極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
 いつもより狭くて寝づらかったはず。が、目覚めたらもう九時を過ぎていた。
 
 ぼんやりとした視界で部屋の天井を眺めていると、「おはよう」と低い声が真横から聞こえてきて一気に意識がはっきりとした。目を見開き、隣を見る。

「お、おはよう」

 織は横たわったまま頬杖をつき、微笑を浮かべている。

 本当に昨日うちに泊まったんだ、といまさら思う。
 織を見ると、寝ぐせで髪がちょっと跳ねていて可愛い。

 なんて思ったのも束の間で、至近距離からじっと見つめられる視線に耐えられず、私は勢いよく上半身を起こした。

「あー……そういえば昨日聞くの忘れてたけど、織は今日仕事大丈夫なの? 私は休みだけど」

 私は基本的に土日が休みだ。織のスケジュールは、全然予測できない。

 もう九時過ぎだし、休みかな。それとも、出社時間とか決まってないだろうから、午後から打ち合わせとかあるのかもしれない。

 いろいろと考えながら、ベッドから足を下ろしかけた瞬間、お腹に腕が絡みつく。

「今日は休み。だからもう少し寝よ?」
「え、きゃっ」

 気づいたときには景色が反転し、再びベッドに身体が沈む。

「気持ちいー……」

 織は私を包み込んでつぶやくと、睫毛を伏せて幸せそうに頬を緩める。

 織の体温や匂い、腕の重み、伝わる鼓動。
 昨夜からそれらすべてに、私も心地よさを感じていた。

 織はゆっくりと私の頭を繰り返し撫でる。その間、私は織のシャツに顔を埋め、恍惚としてそっと織の背中に手を回した。

 こんなふうに優しい手つきで触れられたら、もっと……って思ってしまう。
 昨夜も理性と煩悩のはざまで揺れ、結局眠気に負けて朝を迎えた。

 織はこういう私の気持ちを知ったら、どう思うんだろう。
 いや。その前にこの思考を悟られたら、私、恥ずかしくて死ぬ。

 気づけば織の手が止まっていた。
 そろりと織を窺うと、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
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