極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
「ほ、ほら! 出よう。どこに行く?」
「表参道あたりでも、ぶらっとしようか」
「うん」

 どぎまぎしているのをごまかし、アパートを出る。

 先に階段を降りていく織を見つめ、こっそり呼吸を整える。

 それにしても、着替えのときは顔から火が出そうな思いをした。
 こっちは心臓が口から出そうなほどだったのに、織はずっと冷静な雰囲気だったし。

 まあ、職業柄、女性の下着姿なんて見慣れているのかもしれないけど。

 ちょっとモヤモヤした気持ちになったけれど、すぐに払しょくして織の隣に並ぶ。

 駅について電車に乗って移動する。
 その間、織を振り返る女性が多いことに気がついた。

「麻結? どうかした?」
「えっ。あ、大丈夫」

 織は不思議そうな表情をしていたけど、それ以上なにも言わなかった。

 うっかり織を注視しすぎた。
 それにしても、今日確信した。織ってモテる。

 黒い細身のチノパンに、白い襟付きシャツ。それにネイビーのジャケット。
 すべて色も形もシンプルだ。でも、それだけにスタイルの良さが際立つ。

 以前はまともに顔も上げず歩いていたから周りの人の目に留まらなかっただけで、今の織は堂々とした立ち振る舞いとその美貌で、すれ違う人たちすらも虜にする。

 現状を目の当たりにすると、学生時代にまるで興味を持たれていなかったことが信じられない。

 でも外見だけがよくなったわけじゃない。それよりも、今の仕事に就くために努力して鍛え磨かれた内面から、きっと織の魅力は滲み出ているんだ。

「麻結。俺お腹空いた。ここ入らない?」
「そうだね。入ろうか」

 織は足を止め、カフェのドアを開ける。中に入ると、所狭しと本が並ぶ本屋のようなカフェだった。私たちは二階の席に通される。

「すごいね、ここ。あ、ファッション誌も置いてある」
「どれ? 取ってあげるよ」

 私は織からファッション誌を受け取り、パラパラと捲る。
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