通信制の恋
私が次の授業の準備をしていると、教室の入り口に目立つ栗毛の髪の女の子を見つけた。


「杏樹ちゃん!」


「あ!結!」


私が声をかけると杏樹ちゃんはぱたぱたと私の隣の席までやってきた。


「結は1限目から出てたのね?よく起きられるね〜、私まだ眠いよ〜」


"ふわぁ"と大きな欠伸をする杏樹ちゃんに苦笑いをこぼしつつ、私は眠気に身を委ねて眠っている彼を見ようとした。


すると、バチッと目が合ってしまった。


「(やばいっ!見られてたのがバレる!)」


慌てて頭をグリンッと回して黒板の方を見るとその様子に杏樹ちゃんが不思議そうに首を傾げた。


「どうしたの?結」


「い、いや、何でもないよ」


「そう?あ、3,4限の健康診断受けるでしょ?」


「うん。杏樹ちゃんも?」


「私も出るよー。出席日数稼ぎたいしね。」


杏樹ちゃんもやはり今日の健康診断の時間に出ることで総合学習の出席日数を取るつもりらしい。


そんなことよりもだ、私がさっき天野くんを盗み見ようとした時、なぜ目が合ったのか私は不思議だった。


「(チラ見してたのがバレた…?でも、天野くん目、バッチリ開いたままこっち見てたし…)」


うーん、と唸っていると杏樹ちゃんが心配そうにこちらを見てきた。


「結、やっぱり何かあった?さっきから唸ってるけど…」


「あ、ううん!そんな大したことじゃないの!レポート大変だなーって思ってただけで!」


ガタッ


「!!」


私が両手を左右に振って弁明していると、大きな椅子を動かす音がきょうしつに鳴り響いた。


見ると天野くんが席を立ち、教室を出て行ってしまった。


「(あ…、行っちゃった…。私の声で起こしちゃったかな…)」


「あの黒髪イケメン、入学式の日も寝てたよね」


「え、あ、そうだったね。」


「学校に来てまで寝てるってすごい度胸だよねー」


「1限の時も先生に怒られてたのに、寝てたよ」


「1限から?結、黒髪イケメンのこと見たの?」


「えっ、いや、その、視界に入ったというか…」


「そうだよねー、あんな堂々と寝てたら視界に入るわ。」


うんうん、と大きく頷く杏樹ちゃんに私は苦笑いをこぼしつつも、"良かった"と安堵していた。


チラ見とはいえ、見てたことがバレるのはなんだか恥ずかしかったのだ。
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