通信制の恋
タイムアップは午後6時。


日も落ちた海辺は赤いような紫のような不思議な空の色をしており、なんだか不気味だった。


「それじゃあ、現地解散!今日はお疲れ様でした!」


3年の学年主任の先生がそういうと生徒たちはぞろぞろと海の近くの駅方面と歩いていった。


それは私たちも一緒で、直はまた私の手を握っていた。


「直、今日一日中、私の手を握ってたね?」


「結、直ぐにどっかに行きそうだし、迷ったら大変だから。」


「迷わないし!」


「どうだか。」


信じてくれない直に私はむすっとして手を離そうとしたが、直はそれを許さず、更に指を絡めてきた。


これはいわゆる、恋人繋ぎというやつでは…?


そう考えると、ボンッと顔が真っ赤になった。


「結、顔赤い。」


「誰のせいだと思ってるのよ…」


「さぁ?」


あくまでもシラを切るつもりの直に私は恨めしげに睨んだ。


「そんな睨みも怖くないよ。むしろ可愛い」


「睨んでるのに、可愛い訳ないでしょ!」


「結は、どんなことしてても可愛い」


「可愛い可愛い連呼しないで!」


「結のほうが可愛いって言ってるじゃん」


「う…」


私はあえなく論破され、海の最寄駅へと辿り着いた。


ここで杏樹ちゃんたちとは別れ、私と直は同じ電車に乗った。


もう直が私を家まで送ってくれるのはバイトの時がそうなので、特に違和感もなく、家まで辿り着いた。


電車の中でも、家に帰るまでも、直はずっと私の手を握ったままだった。


「じゃあ、送ってくれてありがとうね、直。またね。」


「結。」


「へ…っ?」


家へ入ろうと数段ある階段を登ろうとした瞬間、直に手をぐいっと引かれて、直の胸へとダイブした。

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